ものづくり補助金の採択率を高める2つのポイント

本サイトでは、中小企業に人気の補助金であるものづくり補助金の採択率を高めるノウハウと、採択されるためのポイントを整理して紹介しています。

ものづくり補助金とは

日本においては、例年3,000種類もの補助金・助成金等が制度運用されていると言われています。そのすべてを中小企業が活用できるということではありませんが、近年、人気の補助金として注目されているのが「ものづくり補助金」です。

ものづくり補助金は、実は略称であり、正式名は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言います。

中小企業による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金となっています。

ものづくり補助金はなぜ人気なのか

人気の理由は、補助金額の大きさと小規模事業者でも活用ができることです。

ものづくり補助金が人気の理由には補助額の大きさがあります
令和元年度補正予算ものづくり補助金公募要領概要版より

補助金額は100万円~1,000万円(公募のタイミングや要件を満たす場合にはさらにアップすることもあります)となっており、補助金の金額としては非常に大型であるといえます。また、規模の小さな事業者(いわゆる小規模事業者)でも活用することができ、むしろ、従業員数が少ない小規模事業者ほど優遇されることもあります。

優れた技術を持ちながらも、機械等が古くなってしまい、生産性の向上が低下していた小規模事業者が、先端設備を導入することによって革新的な取り組みを行う場合、その機械導入費用として最大で1,000万円(補助率は、原則として中小企業の場合には1/2、小規模事業者の場合には2/3)補助されるということです。

この結果、設備導入に躊躇していた小規模事業者でも、ものづくり補助金を活用することで近代的な生産体制を整えられるとあって、非常に人気の補助金となっているわけです。

ものづくり補助金はいつから実施されているか

ものづくり補助金は、平成24年度補正予算によって2013年3月に公募が開始されています。当時の名称は、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」でした。

平成25年度補正予算では、「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新補助金」という名称になり、2014年2月に公募がスタートしています。

平成26年度補正予算では、 「ものづくり・商業・サービス革新補助金」という名称に変更され、2015年2月から公募が開始されています。

以降、名称の変更を繰り返しながら、継続的に公募が行われています。

令和2年に発生した新型コロナウイルス感染症に対応するため、令和2年度の公募においては、新型コロナウイルス感染症の影響などが加味され、補助額などが変更されるなど、非常に柔軟な運用がされています。 今後も、名称が変更される可能性はありますが、今後も引き続き「ものづくり補助金」の公募は行われると想定されています。

当サイトの目的

ものづくり補助金は、後述するように、申請すれば必ずもらうことができるというものではありません。

申請しても、補助金を受けることができるのはおよそ半数程度となっています。

補助額が大きくなるものづくり補助金にチャレンジする中小企業・小規模事業者にとっては、補助金をもらえるかどうか(ちなみに、補助金をもらうことができる対象に選ばれることを「採択される」と言います)は、今後の経営において非常に重要な分岐になるのではないでしょうか。

特に、製造業においては、新型コロナウイルス感染症の影響は甚大なところも多く見受けられます。今までと同じビジネスを行っていたのでは経営が成り立たない、業種や業態の転換をも踏まえた新たな取り組みが求められている状況下において、ものづくり補助金を希望しているならば、そこで採択されるか否かについては極めて重要なことであり、採否自体が企業存続に影響を及ぼすといっても過言ではありません。

そこで、ものづくり補助金への採択率を高める、採択されるためのポイントについてご紹介していきたいと考えています。

やや結論じみたことになりますが、ものづくり補助金に有利に採択されるためには、事業計画書の完成度の高さも去ることながら、次の2点が極めて重要であると考えられています。

それは、

早く申請すること

加点項目を積み上げること

です。

なぜこの2点が重要なのかについて、説明をしておきますので、これからものづくり補助金への申請を検討している方はどうぞ参考にしてみてください。

2つのポイントを踏まえた申請を行うだけで採択への可能性は飛躍的に高められることが分かっています。

補助金の特徴について

補助金には大きく3つの特徴があります

ものづくり補助金への申請を行うためには、補助金の特徴(性質)について理解を深めておくことが大切です。

3点についてあらためて確認をしてください。

補助金には大きく3つのポイントが存在します
ミラサポ

1.補助金ごとに目的と仕組みがある

令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金では、次のような目的が示されています。

目的・概要(サマリ)

中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する。

目的・概要

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。

令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金申請要綱より抜粋

この目的を十分に理解したうえで、ものづくり補助金への申請を検討することがポイントです。

具体的には、ものづくり補助金の申請時に事業計画書が必要となりますが、事業計画書に記述していく内容には上記のあるような、補助金そのものの目的に沿った内容の記述が求められるのは当然のことです。

補助金の目的や背景などを理解しない状態で事業計画書を作成しても、なかなか採択を得られないということになりかねませんから注意が必要です。

2.補助を受けられるのは事業全部または一部の費用

補助金と呼ばれるもののほとんどは「全額補助」(全額補助されることを定額補助と呼びます)ではありません。あくまでも事業実施に伴う費用の一部が補助されることになります。

ものづくり補助金であれば、補助率は1/2~2/3となっています。

1,000万円ものお金が補助されると聞くと非常にラッキーな話に聞こえるでしょう。しかも、補助金というのは原則として「返還不要」となりますので、設備投資を行う際に最大で1,000万円をもらうことができ、かつ、将来にわたって返す必要もありません。

しかし、全額ではないということに注意が必要です。

補助率が1/2であれば、新たに設備投資を行う場合の総額が2,000万円の時に、1,000万円の補助を受けられるということです。ですから、1,000万円はあくまでも自己負担となるわけです。

総額1,000万円の場合、補助率が1/2の場合には500万円が補助されることになります。

単に補助金が貰える!という流れだけで飛びついてしまうと、いざ資金繰りに窮するというケースも見られますのでその点は注意が必要でしょう。

その理由は、「補助金は後払い」なのです。

しかも、事業実施後に事業完了報告を行って、それがしっかりと確認できてからの入金という流れになります。

例えば、機械設備を導入するのに数か月掛かり、そこから完了の報告書を作って確認を終えるまで数カ月掛かるとすれば、相応の期間は補助金を受け取ることができません。

補助金はあくまでも使ったお金に対して補助されるわけですから、支払いを延ばすというわけにはいきませんし、補助金で支払いますというのでは、設備業者も納得はしないでしょう。

そうすると、補助金に相当する金額の「融資を受ける」というような流れになることが多いです。もちろん、ものづくり補助金の申請を行うという前提であれば、金融機関も融資を受け付けてくれることは多いので、その点は大きな心配はないにせよ、多額の資金を一時的にでも借り入れる状況になることは事実です。

また、補助金の金額に目がくらんでしまい、それほど必要のなかった新型設備を導入してしまい、業績向上が上手く進まず、結果的に非常に資金繰りに厳しくなったという事例も多く聞く話です。

補助金ありきで進めてしまうと、本当に必要ではないようなものを導入してしまうということにつながりかねませんので注意が必要でしょう。もちろん、それを防ぐために、自社でしっかりと事業計画書を作りこんでいくことになるわけですが、それすらいくらでも内容は変えることができてしまうわけですから、ある程度は補助金前提での計画書になるは致し方ないため、大きな戦略のブレに気づかない可能性があるわけです。 大きな金額が貰えるということは、それだけ資金的な部分でしっかりとした基盤を構築しておかなければ、会社の屋台骨が揺らいでしまうこともあり得ますから注意が必要です。

3.補助の有無やその額については審査があります

補助金と似たものに助成金と呼ばれるものがあります。どちらも国の支援策なのですが、経済産業省が管轄する支援策を補助金、厚生労働省が管轄する支援策を助成金と呼び、一定の棲み分けがなされています。

助成金の大きな特徴は、要件を満たしてさえいれば、申請をすることで必ずもらうことができる、というものです。とはいえ、助成金の予算額は決まっていますから、いわば早い者勝ちで、申請順に受付を行って予算が終わったらそれで終了、という流れになります。

補助金は、審査のうえ採択されるかどうかが決まるという特徴があります。いわば、コンテストのようなもので、一定の期間に公募がなされ、その間に申請を行った企業の申請書(通常は事業計画書または経営計画書)を審査員が審査を行い、順位付けをしたうえで、上位の企業から順に採択されていきます。

助成金においては「正確性とスピード感」が最重要ポイントになりますが、補助金に関していえば、それに加えて「有利に審査される」ことを目指す必要があります。

なお、補助金をもらうためには、補助金をもらう権利を有するために採択をされることに加え、決定した補助金額を満額もらうための報告・検査に対応することも重要なポイントになってきます。

補助金をもらう際に「事業計画書」に記載したことがすべてそのまま最後まで一貫して流れていきます。例えば、新しい事業を行うために機械設備Aを導入するという事業計画書を策定し、ものづくり補助金に申請のうえ、採択されたとしましょう。

その後、採択決定を受け、事業を実際に実施したとします。このケースで、普通に機械設備Aを導入して、それをしっかりと報告できればなんら問題なく補助金を受けることは可能なはずです。

ところが、機械設備Aが廃番になってしまったため、性能も金額もほぼ同様の機械設備Bを導入後、完了の報告を行った場合、補助金が貰えないというケースが生じてしまいます。補助金の審査を通過しているのはあくまでも機械設備Aであって、それ以外の設備導入は対象外になってしまうからです。

補助金の申請から受給までの流れは、一貫性が非常に大切であることを十分に理解しておく必要があります。なお、事業実施時に変更を伴う場合には変更申請などを行うことで対応できるケースもありますので、想定外のことが生じた場合には、その時点で自社で勝手に判断せず、ものづくり補助金事務局へ相談することが必要です。

1,000万円もの予定していた資金が得られないということになれば、場合によっては資金ショートに繋がる可能性もありますので、ものづくり補助金は採択を勝ち取ることだけでなく、設置や報告まで含めてしっかりと自社内で管理を行っていくことが求められます。

ものづくり補助金を分析する

ものづくり補助金には公式サイト(ものづくり補助事業公式ホームページ)があり、その中で公募情報などさまざまな情報が公開されています。

多くの事業者は、「公募情報」と「採択情報」に最大の関心が向くのは当然のことですが、一方で「データポータル」という情報には気づいたでしょうか。

ものづくり補助金データポータル

データポータルは、ものづくり補助金の採択に関するさまざまな情報が統計データとして整理されており、今後、ものづくり補助金の採択を目指す事業者にとってはとても有意義な情報が満載となっています。

公式サイトでは次のような説明がされています。

令和元年度補正予算事業・令和2年度補正予算事業のこれまでの申請及び採択状況のデータをまとめています。幅広い業種、様々な規模、初めて申請する方等にも幅広く採択の機会があることがご覧いただけます。

(1次:n=2,287 2次:n=5,721 3次:n=6,923 4次:n=10,041)

※当サイトは2021年2月末までの情報に基づいています。

ものづくり補助事業公式ホームページ

データポータルを掘り下げて見ていくことで、採択率をアップするための方法について把握することができるようになりますので、ここはしっかりと確認をしておく必要があります。

それぞれについて、整理しておきたいと思います。

当サイトで紹介しているデータポータルの情報は、2021年2月末時点で公開されている情報となります。データポータルは採択情報が公開されるたびに更新されていますので、最新の情報はデータポータルにてご確認ください。

また、当サイトの分析情報も2021年2月末時点でのデータポータル情報を前提にしています。そのため、直近のものづくり補助金の傾向とは異なる可能性もありますので、あくまでもこの時点での分析ということで押さえていただき、最新のデータポータルにてご自身で正確な分析を行うようにしてください。

申請件数の推移

ここには非常に重要な情報が含まれています

ものづくり補助金の新セ氏数の推移を見ると、遅くなるほど申請者数は増加する一方、採択率はどんどん低下していく傾向にあります

この統計では、1次締切から4次締切分までのデータが整理されているのですが、結論的に言えることは、次のような事実です。

早く申請した方が採択率は高い。

1次締切の採択率は62.5%ですが、2次で57.1%、3次で38.1%とどんどん下がっていき、4次締切では31.2%まで低下していきます。1次と4次を比較すると、ちょうど2倍の差となっているわけです。

最大1,000万円の補助金を受けられるかどうかという重要な分岐において、2倍の差があるというのは経営におけるインパクトが非常に大きいといえるでしょう。

もちろん、単に採択率が高いからといって適当な事業計画書では意味がありませんが、優れた事業計画書を準備したうえで「できるだけ早く申請を行う」というのは、ものづくり補助金の採択率を高めるうえで非常に大きなポイントです。

4次締切で惜しくも不採択になってしまった申請者でも、1次締切で申請できていれば採択されたという可能性はあり得るはずです。そのぐらい、2倍の採択率の差というのは大きいと言えます。

ものづくり補助金は、採択されない(不採択)場合には、次回以降、何度でも挑戦することができるのですが、年度代わりの第1次締切が狙い目というのは言えそうです。ただし、年度が代わることによって、申請書への記載事項が変更されたり、加点(後述します)の要素なども変更になりますので、できるだけ一発で採択を勝ち取った方が良いのは当然のことです。 そもそも、事業実施の時期が後ろ倒しになってしまえば、その分、機会ロスが生じることにもなりますし、予定していた事業がものづくり補助金に採択されないことを理由に先送りになってしまっては、新型コロナウイルス感染症の影響を跳ね除けるということも難しくなり、経営的な厳しさを残し続けなければいけない可能性が出てきます。

事業計画書の作成時間

作成時間に関しては、長い時間を掛ければ掛けただけ有利というわけではありません。ただし、作成時間が少ないようではやはり採択されるのは難しいというのが現状です。

ものづくり補助金の申請書類である事業計画書は、相応の作成時間が採択のためには必要となります

10時間以内で作成された事業計画書の採択率は34.2%と、最も低い水準になっています。この点だけを見ますと、申請時に必要な事業計画書の作成時間は短いと採択されにくい、ということが言えそうです。

ものづくり補助金の事業計画書は、特別なフォーマットが存在するわけではないため、申請事業者が自由に整理することができるなど、柔軟性が確保されているといえます。その分、ある程度時間を掛けて作成を行っていかないと、なかなか他の申請者と差をつけることができず、採択されるのは難しいという傾向が見られます。

とはいえ、時間を掛け過ぎれば良いかというとそうでもなく、特に、120時間以上もの時間を費やした事業計画書は、10時間以内で策定されたものよりは採択率は高くなっていますが、それほど大きな差であるとは言えません。

もっとも採択率が高いのは、90時間超120時間以内であり、採択率は45.1%という結果です。90時間~12日間というのをよくよく考えてみると、かなりの時間を割いていることが分かります。1日8時間労働の会社であれば、11日から15日ひたすらに計画書を作成しているわけであり、これは1か月間毎日計画書を作成していることになります。

ある程度の規模の中小企業であれば、ものづくり補助金獲得に向けて特定の人材に任せるということも可能でしょうが、小規模事業者ということであれば、そんな余裕はありません。ですから、社長自らが通常業務の他に時間を作って事業計画書を作成する必要があるわけです。 1,000万円クラスの補助金ともなれば、これだけの労力が必要になる訳です。ですから、事業計画書の作成においても早め早めに準備をしていく必要があることが分かります。

申請のタイミング

特に採択率を高めるような情報ではありませんが、ギリギリのタイミングまで申請準備を行っていることが分かります。

ものづくり補助金の申請タイミングとしては、ギリギリでの申請件数が非常に多くなっています

早く出したから採択率が高いとか、遅く出した方が有利ということはない、そんなことがここから読み取ることができます。

公募締切日のギリギリとなる当日に申請するケースが最も多くなっています。採択率は39.8%であり、最も高くも最も低くもなく、どちらかというと低い採択率だといえます。

最も低い採択率は7日以上前に出した事業者であり、採択率は32.4%となっています。とはいえ、この数値を見て、「早く出すと不利になる」という因果関係はないように思えます。

なぜなら、最も採択率が高いのは5日前の50.9%であり、その次は1日前の48.5%です。提出時期と採択率との間に直接的な因果関係が明確に存在するとはいえないようです。 直前までしっかりと考え抜いて、あとは申請間際に慌ててミスが無いように数日程度前になって出す、という流れが最も採択率が高いように思えます。

申請者の規模(従業員数)

従業員数で言うと、6~20名規模の事業者が採択率は高くなっています。

ものづくり補助金は従業員数が少ない事業者ほど申請件数は多く、6名から20名までの従業員数である事業者において最も採択率が高くなっています

ものづくり補助金そのものが、小規模事業者に対してやや有利に取り扱うような趣旨が見受けられ、製造業の場合には20名以下が小規模事業者となっている都合上、20名以下の事業者の採択率が高いものと類推されます。

5人までの事業者も当然に小規模事業者ということになりますが、採択率はそれほど高くないところを見ますと、事業計画書の優劣が採択率の差になって現れているとも言えます。先の項目でも見たように、事業計画書の作成には相応の時間が必要ですので、5名以下の小規模事業者の事業計画書に割く時間が短いというデータまではありませんが、社長以下数名で事業を行っている前提を踏まえれば、それほど多くの時間を事業計画書の作成に割くことはできないと考えられますので、採択率がやや低いということが言えるのかも知れません。

とはいえ、ものづくり補助金が規模の小さな事業者に多く活用されているという事実はこのデータから読み取ることができます。うちは従業員が少ないから・・・なんて考えている社長がいればそれは誤りで、むしろ小さい事業者ほど活用しやすい補助金がものづくり補助金と言えるのではないでしょうか。

申請者の業種

申請者の業種として圧倒的に多いのが「製造業」です。

ものづくり補助金の申請事業者の業種としては製造業が圧倒的に多くなっていますが、業種と採択率には大きな相関関係は見られません

ものづくり補助金が始まった当初は「製造業」のみが対象業種となっていました。現在はサービス業などにも対象は拡大されていますが、それでもやはり製造業が圧倒的に多くなっています。

大型の設備導入・設備投資となれば、製造業では珍しくないことであっても、サービス業などでは稀です。そんな事情もあって、製造業が圧倒的に多くなっています。業種別の採択率の差はそれなりに見受けられますが、特に因果関係のある差とは言えないように考えられます。

製造業の採択率がやや高くなっているのは、ものづくり補助金の目的に合致しやすく、事業計画書の内容にも求められていることが記述しやすいという側面があるものと考えられます。

補助金の申請額

補助金の上限額を申請する事業者が大半です。

ものづくり補助金の申請事業者は、補助額を限度額いっぱいまで希望する傾向にあります

申請額に関しては、補助金の上限額を申請するケースが多いようです。補助金申請額が大きいほどに採択率が高いという傾向がありますが、これは「補助金申請額が大きいほど採択されやすい」ということに直結するとは言い切れません。

ですが、補助金の申請額が大きいほどに事業計画書の完成度の高さを求められるようになるでしょうから、申請額が大きな事業者ほど事業計画書の作成には力を入れてくるということは言えそうです。それが結果的に採択率の差になって現れているというのであれば、説明としてはそれほどの飛躍はないでしょう。

また、この後のデータで解説しますが、申請金額が大きな場合には自社だけではなく外部のコンサルタントなどの支援を受けている可能性が高くなり、結果的にブラッシュアップされた事業計画書による申請案件が増えるため、採択率が高まっているということも指摘できるでしょう。

支援者の関与(補助金に対する報酬の比率)

支援を必要としない事業者が多いですが、採択率だけを見ると「支援を受けた方が有利」であると言えます。

ものづくり補助金の申請において、支援者を活用していない事業者が大半ですが、支援者の存在は採択率を高めることは明らかであることを指摘でき、さらに、支援者への報酬額が大きいほどに採択率が高くなる傾向が見られます

「認定経営革新等支援機関」の支援(確認)が必要という要件があった時期も存在しましたが、現行のものづくり補助金においてはそのような制度は撤廃されています。

その結果、外部の支援機関を頼らずに自社だけで申請を行う事業者が最も多くなっています。一方、採択率だけを見ますと、支援を受けている事業者の方が採択率は軒並み高くなっています。

この結論だけを見れば、ものづくり補助金の申請においては、自社だけで行うのではなく、外部の協力を得た方が採択率が高まるというのは言えそうです。

また、支援者に対しては「報酬額が高いほど採択率は高くなる」という傾向にあることが説明できます。これは、報酬額が高いということは、それだけサポート内容が充実するから、というように考えることができます。

支援者というのは、民間企業(経営コンサルタント、税理士・公認会計士、行政書士など)と公的機関(商工会・商工会議所、支援センターなど)があります。

公的機関で支援を受ける場合、基本的には報酬の支払いは不要であることが一般的です(ただし、所属会員であることなどが支援要件となっていることがありますので、厳密にいえば会費のようなものは必要でしょうが、金額的には小さな負担で済みます)。公的機関での支援は、ゼロベースですべての面倒を見てもらうということよりも、分からない部分を相談しながら、助言をもらうというものが多いでしょう。

一方、民間企業の支援は有料が前提であり、報酬としては着手金+成功報酬(~15%程度)となっており、補助金申請額が1,000万円の場合には相応の報酬を支払うことになります。その代わり、ゼロベースから相談することができ、事業計画書についても情報コミュニケーションを繰り返しながら一緒に作成してくれるところが多く、採択後の事業実施フォローや完了時の報告まで面倒を見てくれるというところも少なくありません。

報酬額が多いところほど、総合的なサポートを受けることができるということもあって、採択率が高くなっていると言えそうです。

この辺は経営者の考え方次第ということになりますが、ある程度の報酬を払ってでも確実にものづくり補助金の採択を得たいということであれば、申請支援を受けるというのは良い選択であると言えそうです。

申請までの支援期間

支援を受ける場合の支援機関は、11~15日が、申請者が多く採択率も高くなっています。

ものづくり補助金の申請において、支援者による支援を受ける場合には相応の支援機関が必要となっており、その期間は比較的長期にわたるものとなっています

このデータは、支援期間の大小が採択率に大きな影響を与えていることを示すような資料とは言えないようです。

ですが、ものづくり補助金の申請プロフェッショナルである外部の支援を受けたとしても、11日~15日間の期間を要するということです。これは、日々の業務として行うことを考えれば、1カ月かそれ以上の期間をものづくり補助金の申請に費やすことになります。

そう考えると、支援者に対して相応の報酬を支払うということについても納得がいきます。支援者もかなりの時間を依頼者のために割くことになるからです。

加点項目の数

加点項目が多ければ多いほど良い、これも非常に重要なデータです。

ものづくり補助金の申請において、加点項目が多いほど採択率は高いという明らかな傾向が見られ、これは非常に重要なポイントであると言えます

ものづくり補助金では、審査時に加点がなされる項目というものがあります。そして、加点が多ければ多いほど有利であるというのがこのデータから明らかになるわけですが、項目が積み上げられるに連れて採択率が右肩上がりに高くなっていることに着目してください。

このように、明らかに採択率を高められるというデータには着目をする必要があります。

申請時に必要な書類

ものづくり補助金の申請に必要な書類は大きく4つあり、そのうちの3つが必須、1つは任意での提出となりますが、任意提出の書類が加点項目に関するものであり、重要性の高いものであるといえます

ものづくり補助金の申請時には、「①事業計画書」「②賃金引上げ計画の表明書」「③決算書等」「④その他加点に必要な資料」4点の書類が必要となります。

この中で、①~③は必ず必要な書類ですが、④「その他加点に必要な資料」は任意での提出となっており、提出してもしてなくても良いものとされています。

しかしながら、これを出すか出さないかによって採択率に非常に大きな影響を及ぼすことが分かっており、かつ、たくさん出すことによって採択率を高めることができるならば、より多くの加点を狙うのが得策ということになります。

審査と加点

ものづくり補助金の審査においては、事業計画書によるものと、加点によるものの2つによって審査が行われます

ものづくり補助金は、申請後に審査員によって審査がされるわけですが、これがいわゆる事業計画書の審査です。審査は、技術面・事業化面・政策面の3点から行われ、相対的な点数が付されて、上位になるほどに有利になるというわけです。

一方、加点というのは事業計画書の出来云々とはまた別の観点から点数付けがされるものと、と考えて良いでしょう。 令和元年補正予算ものづくり補助金においては、次の4つが加点対象とされています。

1.成長性加点:経営革新計画の承認

2.政策加点:小規模事業者または創業5年以内の事業者

3.災害等加点:事業継続力強化計画の認定

4.賃上げ加点等:規定された要件を満たす賃上げの実施計画

このうち、政策加点に関しては、これから狙うというよりも、該当するかしないかによって自動的に加点になるかならないかが決まってしまうため、意図して加点を獲得するということはできません。

また、賃上げ加点等については少し細かいですが次の2つが加点対象となっています。

④-1:「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」、又は、「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」

④-2:「被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合」

ものづくり補助金公募要領より抜粋(令和元年度補正予算分)

ものづくり補助金の申請要件でそもそも賃上げが求められているうえに、さらに賃上げ等の加点を狙うのは、余裕のある事業者にとっては良いですが、敷居が高いケースも多いように考えられます。賃上げ自体は従業員の待遇改善という点で、また、それがモチベーションアップにつながって生産性向上に好影響を与えるということも考えられるのですが、従業員の賃金は会社経営ということで考えると固定費ですので、大きく変更させてしまうことで経営状況を悪化させてしまうという可能性も否定できません。特に、新型コロナウイルス感染症の影響によって業績が不安定な事業者にとって、必要以上の賃上げはむしろ会社の経営状況を悪化させ、従業員に対して良かれと思って行ったことが裏目に出て結果的に従業員を路頭に迷わせるようなことにもなれば、本末転倒です。

そこで、注目できるのが経営革新計画と事業継続力強化計画です。

必須の加点項目

まず、事業継続力強化計画に関しては加点項目として必ず獲得する必要があります。

事業継続力強化計画は、令和元年にスタートした認定制度ですから、聞いたことが無いという事業者も多いかもしれません。

近年、地震や台風などが増加し、さらに、被害規模も大きくなってきています。そのような自然災害から会社を守るための防災・減災に取り組む企業を支援するというのが事業継続力強化計画の認定制度であり、計画書を作成し、認定を受けることでさまざまな支援策を受けることができるようになっているのですが、その支援策の一つに「ものづくり補助金の加点」が挙げられています。

(ただし、これは令和元年度補正予算におけるものづくり補助金に対してであって、今後は変更の可能性があります)

事業継続力強化計画は事業継続計画(BCP)の簡易版ともいわれることがあります。

BCPと聞くと「難しい」というイメージを持つ事業者も多いと思いますが、事業継続力強化計画はあくまでも簡易版としての位置づけになりますので、それほど難しい計画を策定しなければならないわけではありません。

また、事業継続力強化計画申請支援・作成代行サービスなども存在していますので、そういった支援者を活用すればそれほど時間を掛けずに認定を受けることができます。

現行の制度ですと、認定を受けていなくても「申請済み」であれば大丈夫ということですが、認定されないということになれば採択そのものが取り消されてしまう事態になりますので、できれば認定を受けておくと安全です。なお、事業継続力強化計画の認定を受けるまでの期間は、申請後45日間かかるものとされています。

できれば獲得したい

続いて、狙うのが経営革新計画です。

経営革新計画(承認制度)は、法律に定められたもので、一定の要件を満たす革新的な取り組みを事業計画書としてまとめ、県知事の承認を受ける制度となります。

一定の要件とは、付加価値額と給与総額の向上(従来の経常利益率要件は、令和2年10月の改正によって給与総額に変更されました)を満たすことです。また、単に要件を満たすだけではなく、その取り組みが「新たな取り組み」に該当している必要があります。

新たな取り組みというのは明確な定義が存在するわけではありませんが、簡単に言えば「同業者がやっていないような製品を製造したり、サービスを提供したりすること」と言えます。つまり、自社ならではの新しい取り組みを中核とする事業計画を策定し、その承認を県知事から受けるとものづくり補助金の加点になるわけです。

経営革新計画は、県によって承認の流れが異なります。長いと3カ月程度、承認までの期間を要することがありますので、経営革新計画で加点を狙う場合には早めの準備が肝要です。経営革新承認制度については制度変更も行われていますので十分な情報収集が必要です。

経営革新計画に関しては、昔からある制度ですから、公的機関も民間機関も広く支援を行っています。とはいえ、場合によってはものづくり補助金で採択を勝ち取るよりも難しいといことがあり得ますので、自分だけでつくるということではなく、支援者に依頼して作成するのがおすすめです。

加点項目に関するまとめ

事業継続力強化計画の認定による加点は必須として、可能であれば経営革新計画の承認も加え、最低でも1個、できれば2個の加点を狙うようにしてください。

こうするだけで、0個の採択率11.1%が、2個の採択率31.8%へと、およそ3倍に高めることができるようになるのです。

事業継続力強化計画の認定だけでも加点を狙わない手はありません。

過去3年間の「ものづくり補助金」交付回数

初めてものづくり補助金をもらう事業者が圧倒的に多くなっています。

ものづくり補助金の交付回数に関しては初めて受給する事業者が最も多くなっています

ものづくり補助金の交付回数は、過去交付なしが事業者数としては最も多くなっていますが、採択率に関しては42.9%であり、過去1回交付の採択率42.3%と大きく違いはありません。

令和元年度補正予算のものづくり補助金においては、過去に1度も交付を受けたことのない事業者が優遇されるようになっています(正確には、過去に交付を受けた事業者が減点される)。

ものづくり補助金では、初めて交付を吹ける事業者が有利な仕組みとなっています(正確には、交付を受けた事業者が減点される)

その結果、初めて交付を受けるという事業者の採択率が高くなっているのは納得できるものですが、かといって1回交付を受けた事業者でも採択率は比較的高めです。

これは、2つの理由が想定できます。

1つは、過去に1度交付を受けた事業者は減点をされる場合であっても、それほど大きく減点されるわけではないこと。また、過去に1度交付を受けた事業者は、採択されるノウハウ(事業計画書作成の方法)を有していると考えられるため、採点時にある程度の得点を獲得できること、です。

ものづくり補助金は大きな資金が必要となりますので、何度も繰り返し活用したいという事業者は少ないのかも知れませんが、優れた事業計画書を作成し、しっかりと加点項目も押さえることができれば、複数回であっても十分に採択はされるということになります。

ものづくり補助金採択率アップのまとめ

ものづくり補助金データポータルは、これからものづくり補助金の申請を行う事業者にとって、非常に有益な情報を含んでいることがお分かりいただけたと思います。

採択率を上げるためには、まずはこの2点が非常に重要です。

早く申請すること

→年初からの申請時期が早いほど採択率が高い

加点を狙うこと

→加点項目が多いほど採択率が高い

早く申請するためには、定期的に情報をチェックして、年度当初の公募開始を狙うのがおすすめです。もちろん、そのタイミングまで待てないということも多いでしょうから、その場合には直近の公募に間に合わせられれば、それが最も採択率を高められる申請タイミングということになります。

加点項目については、事業継続力強化計画の認定は早めに受けておきましょう。また、経営革新計画の承認も狙いたいところですが、これは非常に時間が掛かるので早めに着手することをおすすめします。

それ以外にも、コストの問題もあると思いますが、ものづくり補助金のように長年実施されてきた補助金は、採択ノウハウを持つ外部の専門家に相談するというのが実際には好ましいです。信頼できる専門家を見つけられるかどうかという点も、採択率アップには大きなポイントであるといえるでしょう。

ものづくり補助金に関心があるなら真っ先に取得が必要なもの

ものづくり補助金は、電子申請のみの受付となっています。

公募要領の概要版には、下の方に「※本補助金の申請には、GビズIDプライムアカウント」が必要です。取得未了の方は本補助金にはご応募できません。」と書かれています。

モノづくり補助金の申請時にはGビズIDが必要となります

ものづくり補助金を申請するためには、GビズIDプライムアカウントが必要となりますので、まだ取得していない場合には早めに取得手続きを行ってください。

GビズIDプライムアカウントの取得は難しいということはないのですが、取得申請はインターネット上だけでは完結せず、郵送にて必要書類を事務局に送付しなければなりません。さらに、取得まで2週間から3週間かかるようになっていますので、ものづくり補助金の公募に間に合わないといった状況になることもあり得ます。

早めに申請を行うようにしてください。 取得は、GビズID(gBizID)公式サイトから行うことができます。

GビズIDプライムアカウントの取得は、GビズID(gBizID)公式サイトから行うことができます

そもそもGビズIDとは、さまざまな行政サービスを電子上で受ける際に必要となるアカウントのことで、ものづくり補助金を始めとした補助金以外にも、さまざまなところで役立てることができます。

加点対象のところで説明した、事業継続力強化計画を電子申請する場合には、GビズIDが同じように必要となります。

GビズIDプライムアカウントの取得には印鑑証明書(登録申請書)の送付が櫃となり、インターネット上だけでは完結しないことに注意が必要です

GビズIDの申請にあたって注意が必要なのは、アカウントの種類です。GビズIDには、gBizIDエントリー、gBizIDプライム、gBizIDメンバーの3種類があります。このうちのgBizIDプライムを取得してください。gBizIDエントリーではものづくり補助金の電子申請を行うことはできません。また、gBizIDメンバーは、gBizIDプライムを取得した事業者でないと取得・発行できないようになっています。

gBizIDプライムアカウントの取得は無料ですが、印鑑証明書(登録証明書)は実費で取得する必要があります。また、これらの種類を送付するための郵送代が別途必要です。

申請そのものは難しくありませんので、公式サイトに記載された流れで進めることができるはずです。

繰り返しますが、最近は補助金だけでなくさまざまな行政サービスを受けるうえでgBizIDが必要となっていることもあって、発行までに時間を要する傾向にあります。ものづくり補助金の申請を予定している方は、今日明日にでもgBizIDプライムアカウントの取得だけは済ませておくことをおすすめします。

良くある質問

創業者の取り扱い

ものづくり補助金の申請を行うためには、既に創業していることが前提になります。

最近は、国が創業を後押ししていることもあり、創業関係の補助金が充実しています。新型コロナウイルスの影響によって自ら創業しようという人も多く、また、最近では複業(パラレルワーク)によるプチ起業といったものもみられるようになってきました。

これらの創業補助金は、これから創業する予定という前提で申請することが可能なものが多くなっています。ところが、ものづくり補助金に関しては、「会社を設立していること」が前提になっているので注意が必要です。申請書には法人番号を記述するところがあります。

また、個人事業主の場合には「開業届を税務署に提出している」ことが必要です。

創業間もない場合には不利でしょうか?という質問もありますが、実際には創業間もないケースでは有利に取り扱うという補助金も珍しくありません。ものづくり補助金も、「創業枠」といったものが設けられていたことがあり、加点対象になったり、あるいは、補助率の引き上げがなされたこともあります。

しっかりと手続きを行って創業しているのであれば、それを理由に不利になるということはありませんので安心してください。とはいえ、創業直後の場合には情報が不足しがちですから、時間をかけて申請書を整理することをおすすめします。

ものづくり補助金はいつまで

ものづくり補助金が最初に公募されたのは2013年度のことです。平成24年度の補正予算で、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」という名称でした。

その後、名称と内容を微妙に変更しながら令和4年度まで継続して公募されています。

令和4年度のものづくり補助金は、中小企業生産性革命事業として実施されています。この事業は令和元年の補正予算によるもので、3年間行われることが確定していました。したがって、令和4年度で3年間予定されていた中小企業生産性革命事業は終了となります。

令和5年度に向けては、新たに生産性革命事業に相当するものが予算として組まれる可能性はありますが、絶対というわけではありません。したがって、ものづくり補助金が今後も継続して実施されるかどうかは2022年8月現在、不透明です。

⇒令和5年度も継続実施されることが決まりました(2022年12月7日追記)。

とはいえ、新型コロナウイルスの影響によって中小企業の多くは甚大なダメージを受けており、さらに、ウクライナ情勢の影響で燃料代が高騰するなど、業種を問わず厳しい事業所が増加しています。

新型コロナウイルス以降、事業者の思い切った取り組みを支援する「事業再構築補助金」なども公募されていますが、こちらの補助金も今後どのようになっていくのかは不透明ではあるものの、今こそ、補助金や助成金による積極的な国の支援が求められていると言えますので、現在公募されている補助金はその多くが令和5年度になっても継続されるのではないかと予測されています。

事業再構築補助金とものづくり補助金の違い

新型コロナウイルスの蔓延によって、今までのビジネスモデルが通用しなくなるような事業者が増えています。例えば、飲食店であれば感染防止の観点から「来店客」は減少傾向にあり、今後もこの傾向は続くでしょう。無理に来店を促すことは、新型コロナウイルスの蔓延を引き起こす(クラスター)ことにもつながりかねません。

このように、顧客のライフスタイルや価値観が大きく変化した社会情勢のなか、従来までの事業を続けていたのでは先の見通しが立たないという事業者が、抜本的にビジネスモデルを変える(事業を再構築する)場合に補助を受けられるのが事業再構築補助金です。

来店客が減少した飲食店が、キッチンカーで自ら顧客のもとへ行く場合には、キッチンカー設備を揃える必要があります。キッチンカーはいろいろなタイプがありますが、大きな投資額になることが多く、コロナの影響を受けた事業者にとってその負担はすくなくありません。

そこで、補助金によって新たな事業を始めるサポートを行うのが事業再構築補助金です。

ものづくり補助金は、現在の事業を抜本的に変える(再構築する)ということは求められていませんが、事業再構築補助金では既存事業と異なる分野に進出するなど、再構築を伴うことが要件となっています。事業の再構築にあたっては、大きな投資が必要となることから、事業再構築補助金の補助額も大きく設定されているのが特徴です。

また、近年の補助金としては珍しく「建物費」が補助対象となっています。これは、店舗や事務所など、事業再構築に伴って建物を作る場合にそれが補助対象になるというものです。公募初期の時点では建物費が認められていましたが、2022年8月時点では特殊なケースを除いて建物費は実質的に改修等以外においては対象外となっています。

このように、ものづくり補助金は既存事業の生産性を高めるための機械設備等であるのに対して、事業再構築補助金は新たな事業を展開するための各種費用という点が異なります。なお、事業再構築補助金では、経費の対象範囲がものづくり補助金に比べて圧倒的に広いというのも異なるところです。

ちなみに、ものづくり補助金と事業再構築補助金は、取り組み内容が全く異なるのであれば、両方の補助金をもらうことが可能となっています。

令和5年度の申請要件は?

ものづくり補助金と事業再構築補助金はいずれも令和5年度も継続実施することが決定しました(令和4年12月7日更新)。

いずれの補助金も申請区分(タイプ)や補助率などに変更が見られます。また、申請要件も変更の予定となっていますので、今まで申請できなかった事業者が申請できるようになるケースとその逆もありそうなので注意が必要です。

例えば、事業再構築補助金においては「コロナの影響によって売上が減少した」という売上減少要件を原則として満たしていないと申請できませんでしたが、令和5年度の事業再構築補助金では売上減少要件を満たしていなくても申請することのできる区分が追加されることになっています。

事業再構築補助金はコワーキングスペース事業などの新分野展開などが人気となっているようですが、今まで補助金の対象にならなかった事業所からすれば大きな補助金獲得のチャンスになりますので、事業再構築補助金は令和5年度さらなる人気となる可能性があります。

補助金は、年度ごとに要綱などが変わるわけではなく、各回ごとに変更されます。前回まで大丈夫だったものが、次回からは適用されないということも珍しくありませんので、適用対象のうちに早めに申請することが肝要です。

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